オパールのリング

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先日、半年かけてじっくり作り上げたリングが完成しました。

今回の作品は、友人の娘さん(Aちゃん)がデザインしたリングを形にしたもの。

 

大学入学のお祝いに贈られたオパールを使って成人の記念に、と、

Aちゃんご自身がリングをデザインされたそうです。

Aちゃんのデザイン画をパッと見たとき、オパールの大きさ、繊細さがバランス良く生きる、

私もすごく好きなイメージのデザインで、

このデザインが実物になったら絶対素敵だろうなぁと、私の中で完成形の姿が浮かびました。

Aちゃんが描いてくれた素敵なデザイン画は著作権の関係で掲載できないので

制作過程で想像しながら仕上がりまでの時間をお楽しみください(笑)

 

まずはご覧ください、このオパールの美しさ!

メインのオパールの両サイドに何か石を添えたいとのことだったので、

オーダーをいただいてすぐにタイミングよく訪れた神戸宝飾展で入手したのはピンクダイアモンド。

 

オパールの輝きを引き立て、華を添えてくれるような

でもオパールより目立たない、柔らかな雰囲気を出してくれる石。

そんな難しい条件を完璧に満たす石ってあるかな?

そこでパッと閃いたのがピンクダイアモンドだったのです。

希少なピンクダイアモンド、探し回って運良く見つけられたので、万が一の時の予備も含めて3石入手。

これで準備は万端。

さっそく制作にかかります。

 

地金を加工していく方法など、制作方法はいろいろと考えたのですが、

大きさやバランスなどの調整がしやすく、途中でやり直しがきくWAXで

とりあえず作り始めてみることにしました。

 

まず初めはルースの枠から。

ルースの大きさが10㎜という小ささなのであっという間に彫れそうなのですが、

小さいゆえに少しずつ慎重に・・・

だいたい彫れたところで裏面に透かし模様を彫ります。

実はこれも「オパールの裏面に透かしを入れたい」というAちゃんのご希望。

 

誕生花であるバラかササユリを・・・ということだったので、

イメージしている形をデザインしてもらいました。

彫る部分と残す部分のバランスも考えてくれているような

影絵のように素敵なデザイン画をいくつかいただいて、

その中から私が選んだのは「ササユリ」。

ただ、本当に小さな限られた大きさの中を彫るので、

多少簡略化したデザインにさせていただきました。

ササユリのデザインって、ありそうでなかなかないんですよ。

そもそもササユリって、種から発芽までに1年、花を咲かせるまでにはさらに4~5年もかかるそうで、

しかも鉢植えではなかなか育たず、自ら適した場所を選んで咲くため野生の花が多いのだとか。

ササユリの花言葉の中には「希少」という言葉があるのですが、

適切な場所を見つけ出し、長い時間をかけてようやく咲かせてくれる花だからこそ、

希少と呼ばれるほど美しいのですね。

そんなササユリは、Aちゃんのイメージにぴったりだ!と思ったのです。

 

さて次のステップはリングのアーム部分です。

チューブ型のWAXを切断して・・・

スリーマーという道具で内径を広げていきます。

ざっくりと形になってきました。どんどん進めますよ~

 

リングは2本の線でオパールを挟んだようなデザインなので、

ここからWAXをひたすら削っていきます。

線になるまで削り込んでいくのです!

 

2本の線の間にはダイアモンドを留める部分を残して、

オパールの石枠の幅が決まったところでくっつけます。

このくっつける作業はなかなかうまくいかず、何度も何度も付けては外し、また付けては外し・・・

WAXだからこそ何度もやり直せる作業。WAXでの成型にしてよかった~

やっと位置が決まりました!地味な作業なのに時間がかかってしまいました・・・

が、これで安心してはいけません。

ここからさらに、バランスをみながら削り込んでいきます。

オパールの大きさに対して、太過ぎず細過ぎず、滑らかで自然な曲線を目指します!!

 

私の中で、パーフェクトだと確信したバランスがこちら。

これはもう私のこだわりの域なのですが、このバランスに調整するために、

スプルーワックスという線状のWAXを使わず、チューブ型から削り出したといっても過言ではありません。

(たまたま欲しい太さの線状WAXも品切れだったし(笑))

 

さて、あとは2本の線の間に入れる、蔦のデザインのライン作り。

ピンクダイアモンドを包み込むように蔦が巻きついているような、

そんな細かい部分も丁寧にデザインしてくれていました。

これは地金になってからロウ付けするつもりでしたが、

WAXで付けてみて、うまく出来なかったら地金で・・・と思い切ってチャレンジ。

これも何度も練習しては付けてみて、溶けてしまってやり直し・・・の繰り返し(笑)

やり直しすぎてもはや自分の目と手が信じられなくなりかけたところ、

「あれ?もしかしてちゃんと付いてる!?」

明日アトリエに行くという日の前夜ギリギリに、まさかの成功!!(笑)

やっと鋳造に出せます!!

細いところにもちゃんと流れますように!

 

そして祈りはばっちり届きました。

K18ってこんなに金色なんだ・・・

普段は鋳造上がりがもっと白っぽいK10を使うことが多いのでちょっと感動~。

さあ、磨きますよ!ピッカピカに磨きましょう!

磨く作業は彫金作業の中でも一番大好き。

磨きすぎて小さくなってしまわないよう要注意です(笑)

オパールのルースがきちんとはまるように微調整を。

これでよし!

オパールのルースもちゃんと収まります。枠の高さも大きさもばっちり!

 

普段ならどんな石留めもチャレンジあるのみ!のスパルタ精神なのですが、

(石留め下手なのに嫌いじゃない私・笑)

オパールのルースが薄くて繊細なことと覆輪留めということで

(実はこの前スライスダイアモンドのルースを割ってしまったばかりだったし・笑)

今回は特別に、プロの職人さんに託すことにしました。

「オパールは覆輪留めで」とデザインされていたのできっとダイアモンドも・・・と思い

ピンクダイアモンドの石留めも、石を包み込むようなつるんとした感じに仕上げてもらいました。

 

オーダーから約半年、長らくお待たせしましたがやっと完成です!

自分がデザインしたものが形になる感動を、Aちゃんと一緒に分かち合えたら嬉しいな。

地金はK18、やっぱり輝きが別格、上品な仕上がりになりました!!

いや~、我ながら素敵な写真が撮れました♡

どこを撮っても絵になる!(自分で言う)

裏面の透かし模様のササユリ。

裏面と言いながら、オパールの透明感が半端なくて表からもはっきり見えるんですよ、実は。

目を凝らして見てください。

石留め職人さんが、ピンクダイアモンドだけではなくオパールのカラット数も刻印してくださいました。

宝石のカラット数が刻まれると、なんだかリングの格も上がったみたいな感じがして嬉しいですね。

今回、デザイン自体はAちゃんのデザインなのですが、

このオパールはこのデザインに!という感性が完全に私と一致していて、

私の頭の中にAちゃんの魂が宿っていたに違いない!と思うほど(笑)

作っている間はとても楽しくワクワクしっぱなしでした。

 

持ち主の思い描く完成形のイメージが作り手の作りたい形と一致するって、

すごく嬉しいことですよね。

とはいえ、デザインを受け継いで制作するときは、作り手である私の思いは添え物のようなもの。

持ち主が思い描く形をイメージ通りに仕上げることが最優先!

持ち主の想いを超えないように、持ち主の想いにちゃんとぴったり「寄り添う」ことを心掛けていました。

まだまだ技術不足で未熟な私を選んで任せてくださった期待に応えたいという気持ちから、

今回の制作は、私にとって本当に大きな転機になりました。

 

今までみたいな趣味感覚ののらりくらりではなく緊張感も半端なかったけど(笑)、

作品に対して恥ずかしくないような意識レベルを持たなくては、というところからのスタートでした。

 

たとえば、

良い仕事をしようと思うなら、道具を揃えたり環境を整えることも必要だな・・・と実感したり。

(そう、自分の部屋にアトリエスペースを作ったのもこの作品作りに集中する時間が欲しかったからというのがきっかけ。)

ジュエリーに向き合う意識が高まるというか、

作品に対して、持ち主に対して、堂々と自慢できるぐらいの満足感と達成感を持って接したいなと。

思い通りの作品が完成したとき、

持ち主に喜んでいただけたとき・・・

自分の心も満たされてこそそれが叶うということが、なんとなくですが分かってきました。

 

今年は、春に仕上げたオパールのペンダントトップのリメイクと今回のオパールのリング、

2つのオーダー作品の制作を通して、作り手として少しは成長できたかなと思います。

素晴らしい機会をいただけて、本当に光栄でした。

 

実はこの勢いで、次の展開にステップアップするための準備を始めました。

それはもう少ししたらご紹介できるかな~。

まずは楽しみながらコツコツ制作あるのみ!

これからも応援していただけたら幸いです♡