生まれて初めて社会に出て働いたときのことを
覚えてる人は多いはず。
学校を卒業して就職したときのこと
お小遣い欲しさとか、生活費の足しにするためにアルバイトしたときのこと・・・
私の初めてのアルバイトは、高校2年の冬休み。
「園芸店」でした。
父の知り合いの店主から、人手が足りないから応援を捜してると聞き
父に「お前、行ってみるか?」と言われて
断る理由も特になかったので
割と軽~い気持ちで引き受けることにしました。
園芸店とはいうものの、
仕事の内容はクリスマス直後の3日間だけの「しめ飾り売り」(笑)
お店の外で しめ飾りと門松だけを担当すればいいのです。
種類も少なく、しかもレジを使わずに済む、
本当に簡単で初心者向けの仕事です。
指先の感覚がなくなるほどの寒さ以外は
大きな問題などありませんでした。
が、しかし
商品棚の前に立って、
行き交うお客様の顔を見ると突然足が震えだし
「いらっ・・しゃいませ・・・」
「しめ飾り~・・・門松~・・・いかがですか・・・・」
声に出してるつもりが声にならない。
するとさっそく一人のお客様が
「しめ飾りの大をひとつと小を2つ、ちょうだいよ」 と。
「ハイ、全部で○○円になります」と答えないといけないのに、
緊張で暗算ができない(笑)
もう~~~散々な出だしでした。
休憩時間には よろよろの足取りで
近くのたこ焼き屋さんであったかいたこ焼きを食べました。
食べながら 「寒い・・・もう帰りたい・・・でも父に悪いしなぁ・・・」 と
一人で泣きそうになってました。
お店に戻ると、そんな私の顔を見た店員のおばちゃんが
優しく声をかけてくれました。
「最初は誰でも緊張するけど、明日にはもっとラクになるから!
お店の中の植物でもゆっくり見て、リラックスし~や~」
しめ飾りコーナーと違ってお店の中はほんのり暖かいし、
たくさんの観葉植物や切り花がありました。
ひとつひとつプレートに書かれた名前を見て
これはシクラメン、これはポトス、こっちはサンセベリア・・・
呼びかけるように眺めていくうちに
少しずつ 気分は落ち着いていきました。
その中でひとつ、名札のついていない鉢植えに目が留まりました。
テーブルの上の、黄色いプラスチック製の鉢に
クリスマスツリーのような形のカワイイ植物。
一目で気に入り、次の日も、
その次の日も 時間があればこの植物を眺めに行きました。
たった3日間のアルバイト。
それでも初めての仕事は、
1日が長く長く 張り詰めた時間は永遠のように感じました。
大人になったら こんな毎日がずっと続くのか・・・と
将来のことをもっとちゃんと考えなくちゃ、なんて思ったりもして。
3日目が終わる時、
働いたのか迷惑をかけただけなのかわからないような私に
店主のおじさんと店員のおばちゃんは
「よう頑張ったなぁ! あんたは植物と相性がいいんやな。
見てたらわかるで!」
(しめ飾りしか売ってないけど ・笑)
「お店の鉢植えの植物、好きなんひとつ持って帰り。
これ、ずっと見てたやろ? 好きなんちゃうの? 」 と
渡してくれたのが、あの名札のない黄色い鉢植えでした。
「 これはクリスマスツリーになるんやで 」 と言って、
可愛いリンゴの飾りも 細い枝にぶら下げてくれました。
初めてのアルバイト代よりも
もっともっと気持ちがこもっていて嬉しかった・・・
働いたこと、頑張ったことが
お店の人たちだけじゃなく
この植物にも認められたような・・・
そんな気分になって
誇らしい気持ちと
優しさに触れて嬉しさでいっぱいの気持ちと
とにかく やり遂げた!!という気持ちでいっぱいでした。
思い返せば この体験が
私の園芸好きのきっかけになったのかな・・・と思います。
季節柄、あのときに お店にたくさん並んでいたのは
赤やピンクのシクラメン。
緊張と不安でいっぱいだった私を
温かく見守ってくれているかのように咲いていたシクラメン。
今でもシクラメンを見ると 当時の懐かしい思い出が蘇ります。
写真は 我が家の庭の プランター植えのシクラメン。
たしか 寄せ植えに入っていたミニシクラメンが
何年も経って 大きく育ったもの。
マゼンタカラーの花が 冬の庭の
鮮やかなポイントになっています。
今年も綺麗に咲いてくれました☆